女性が玉の輿に乗って幸せになるおとぎ話、あんなのは絵空事。権勢家の貴公子との結婚生活ってどんなものか、私がありのままにお話ししましょう・・・と語りだされる『蜻蛉日記』。一夫多妻、通い婚という制度の下で女性が抱えていた心の内実を、自らの結婚生活の記録とともに赤裸々に綴る、平安女流文学の草分け的な作品です。
激烈な嫉妬や夫婦喧嘩の場面が有名ですが、見どころは他にも。
摂関政治最盛期の礎を築いた大立者・藤原兼家の、豪快でユーモアに富んだ人となりを生き生きと伝える描写。勅撰歌人である作者の珠玉の和歌。紫式部にも多大な影響を与えた自然描写など、多彩な魅力を持つ作品を、ご一緒に堪能しましょう。