皇国史観が強かった戦前には敢えて読まれなかった部分です。なじみが薄い分だけ新しい物語として読むことが出来ます。たとえば、江戸時代の兵学者は楠家最高の軍略家は、楠正儀であると評しています。それは、すでに足利幕府が開かれ南朝は吉野の山奥に追い込められているという状況で、父の楠正成や兄の正行も成し遂げられなかった京都占領を、あっさり4度も実行してしまう能力を認めるからでしょう。他にも、父の足利尊氏に反発し、南朝軍の大将になってしまう足利直冬や、絶世の美少年であったとされる高師夏など個性が光る様々な人物像が描き分けられて興味を引くところです。